IT社会やIT業界を考える本

アップルVSグーグル どちらが世界を支配するのか

フレッド・ボーゲルスタイン 著 依田卓巳 訳
2016.3.1. 新潮文庫
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みんな気づいていることだと思いますが、インフラとしてのITは、本質的に限りなく「1強」を指向しますね。

例えば、印刷物の版下作成やWebサイト制作の仕事は、アドビ社のソフトウェアにほぼ従属していると言っていいでしょう。

90年代、印刷物の版下作成を行うDTPのためのレイアウトソフトといえば、QuarkXPressだったのですが。2001年1月にアドビがInDesignを発表し、バージョンを重ねるうちに、2000年代に逆転。あれよあれよという間にInDesignが圧勝…となりました。

気づいてみると、制作業界はアドビ社の一人勝ち。競合相手は見当たりません。
シェアがある閾値を超えると、データの受け渡しや加工が間違いなく効率的に行えるよう、我も我もと勝者の側に着いて「対応」「準拠」を始めるんでしょうね。そこにぶらさがる作業も、当然勝者のシステムを採用しますから、結局2番手は生き残れないか、残ってもごく小さなシェアしか取れない。
同じようなことが、ITがインフラ的に使われる事業では常に生じるのだと思います。

その競争が巨大な市場で行われているのが、アップルとグーグルの競争。
それが緻密かつ克明に描かれた本です。

オセロゲームのように一気に入れ替わる勢力図が、アップル・グーグルに限らず、パソコンやOSや携帯電話などに関してもうかがえます。「ITを活用する事業展開」を考えるヒントもたくさんあると思います。

InDesignに話を戻すと、今アドビの制作関係のソフトウェアは、最新のものを一通り使うには、個人は月額4980円、法人は月額6980円を払い続けなければなりません(いずれも税別)。
売る側に有利な固定費でアドビがどのくらい潤っているか知りませんが、1強が支配する世界というのは、結局、小作農を生かさず殺さず地主が取り分を最大にする世界なのかもしれません。
社会の仕組みとしてそれをどう是正するかということも、重要な問題だと思います。

ビッグデータ・コネクト

藤井太洋 著
2015.4.10. 文春文庫

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こちらは小説です。「アップルVSグーグル」がIT業界を俯瞰的に、ある意味上から見ているのに対して、IT業界を支える最前線というか最下層の技術者からの視点が、ベースにあります。
フィクションではありますが、著者は元SE。IT業界の多重下請け構造や、元請けの無責任な仕事で最前線の技術者が受けるしわ寄せなどは、現実に即しているのでしょう。

マイナンバー制度がなんだかよくわからないままスタートして、総務大臣がポイントカードとの一体化を無邪気に語っているのに驚かされる昨今。その危険性もよく分かるので、ぜひ多くの人に読んでほしいです。

起伏が激しく登場人物やストーリーも面白いので、映画化されるのではないかな。