ウェブサイトのページでリンク先をクリックした時に、新しいウィンドウが開いて表示されたり、同じウィンドウの中でも別のタブが右側に追加されて表示されるような動きは、よく目にしますね。
この動作を強制的に行うには、よく知られているとおり、ページでリンク設定を記述する際に、a href=”(リンク先)” のあとに target=”_blank” を付けることで可能になります。
これを、「するべきではない」 あるいは 「薦められない」 という議論が、かつてありました。
今はあまり聞かれなくなりましたが、2013年10月11日にこのことについて書いた記事を見直して、普遍的な観点もあるなあと思い、趣旨は変わっていませんが全体に手を入れて更新しました。
ユーザーがコントロールできるブラウザの挙動は、ウェブサイト側で強制するべきでない、という考え方
その主な理由をまとめると…
ページを見ている人が意図しないのに新たなウィンドウ(やタブ)が勝手に開くようにするのは、よくない。リンク先を、現在のウィンドウに表示させるか、新たなウィンドウに表示させるかは、ページを見ている人が決めることである。その選択は、主なブラウザでは右クリックなどでできるようになっている。
ということのようです。
猫式WEBメモ http://d.hatena.ne.jp/nekoshiki/20040126#p1
MITSUE-LINKS http://standards.mitsue.co.jp/archives/001277.html
kuruman.org http://kuruman.org/dateki/target
私が手元の参考書にしている「詳解 HTML&XHTML&CSS辞典 第5版」(大藤幹著、秀和システム発行、2011)でも、
ユーザーの意思とは無関係に、常に新しいウィンドウ(タブ)に表示されてしまいます。(p154)
と否定的な書き方がなされていて、あまり薦められない論調になっています。
現実のユーザーの感覚を想像すると…
しかし、現実にはどうでしょうか。
リンク先を新しいブラウザで開いたり、新しいタブで開いたりする機能は、知らなくてもウェブサイト閲覧に大きな支障はありません。なので、知らずにいる人も多いのではないでしょうか。
そして、見ているウェブサイトとは別のウェブサイトにリンクしている時や、PDFファイルを表示する時などは特に、新しいウィンドウが開くことを予測している人も少なくない気がします。
その場合は、リンク元のページから完全に切り替わることにとまどったり、リンク先ページから元のページに戻ろうとしてうっかりブラウザを閉じてしまうこともあるかもしれません。
もちろんその一方で、常に同一ウィンドウに表示させるようにしたい人にとっては、強制的に自分の習慣を変えられることになってしまいます。「戻る」ボタンだけで推移する習慣の人は、新たに開いたページからはリンク元のページには「戻る」ことはできないので、煩わしく感じるでしょう。
リテラシーが弱いほうに合わせるべきではないか
上記のような議論を踏まえたうえで、どう考えるか。
基本的には、そのサイトを訪れる人にとっての操作性を想像して、サイト運営者が判断することだと思いますが、私はこう考えます。
ブラウザの機能を多用せず「見れたらいい」程度にブラウザを使う人が多く利用するウェブサイトなら、別サイトへのリンクとPDFファイルの表示に関しては、target指定で新しいウィンドウで表示する。
つまり、ブラウザの挙動を自分でコントロールする習慣がある人は、ITリテラシーが高いので、勝手な挙動を疎ましく思うかもしれませんが、何が起きているのかすぐに理解できます。
でも、ブラウザ機能を使いこなしていない人にとっては、常に同一ウィンドウだけで推移する時に生じる不都合は、結構対応に手間取る可能性が高い。
だったら、後者に優先的に対応した設定にするべきではないか… という考え方です。
新ウィンドウ表示の否定論の背景には、1998年から2000年頃にできたページ記述言語バージョンやタイプによっては、この設定が「非推奨」であったり「廃止」となっていたことがあると思われます。(非推奨・廃止の理由もおおむね上記の否定理由のようなので、「卵が先か鶏が先か」ではありますが)
が、2008年にできたバージョンでは使えることになっていて、必ずしも衰退の潮流ともいえません。
かといって、別サイトやPDFファイルを新ウィンドウで表示すること自体が、積極的に推奨されているということでもないでしょう。
あらゆる媒体制作に共通することですが、ユーザーの思考や行動を想定して、不都合の生じやすさとダメージ度合いを勘案して判断する、という姿勢が大切だと思います。