「障害」か「障がい」か

福祉関係の原稿で言葉の表記に迷うもののひとつに、障害障がいがあります。

大阪府は何年か前に「障がい」に統一し、他の自治体や団体も同様の決定をしたところもあります。内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は「障がい」ですが、その後できた「障害者総合支援法」は「障害」です。さらには、「障碍」を推すところもあります。

障害の所在をどこに捉えるか

表現の奥にある本当に考えないといけないポイントは、おそらくは、障害ということを、どこに見るのかということではないかと思います。

社会で生きる上で不便が生じる要素として、個人の身体や内面が有する特性自体に課題があると見るのか。それとも、社会の側が、ある個人の特性にはフィットせずそのような個人が生きづらくなるような課題を抱えている、と見るのか。

それは、赤ちゃんをベビーカーに乗せている人が階段しかない場所で困ったときに、「赤ちゃんは歩けないという障害を持っているから、行動が制限される」と捉えるのか、「階段という障害があるから、行動が制限される」と捉えるか、の違いともいえると思います。
「障害」か「障がい」かという表記の問題よりも、障害を語るときに「障害がどこに属するものと考えているか」のほうが、重要な気がします。

とはいえ、表記をどうするか?

そうはいっても、記述や編集をするときには表記はどちらかにしなければいけないわけですから、どうするか。

行政機関はそこの方針に従うしかありませんし、行政機関に近いところの制作物も、それに準じた判断になるでしょう。

そうでない場合は、制度・法律名などは原典に従うのが当然ですが、他は発行元や書き手の方針によることになるでしょう。
発行元がどちらかに統一する場合もありますし、発行元としては統一したうえで、書き手が別の表記をこだわって使用する場合はその書き手の原稿だけ別の表記を許容する、といった場合もあります。

発行元で統一する場合は、「障害」「障がい」のような表記の違いは書き手によってこだわり度は様々なので、安易に無断で書き換えるようなことのないようにしたいところです。書き換えが必要な書き手には、丁寧な説明が必要です。

いずれにしても、対象となりうる人が不快と感じるかどうかは、判断に大きく影響するはずです。発行機関の内部で当事者の立場の意見が得られない場合は、近しい障害者団体などに意見を聞いて判断するのもひとつだと思います。

参考:
内閣府・障がい者制度改革推進会議資料「「障害」の表記に関する検討結果について」2010年
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_26/pdf/s2.pdf#search=’%E9%9A%9C%E5%AE%B3+%E9%9A%9C%E3%81%8C%E3%81%84′