NPO法人の総会や理事会の議事録に押印が要るか

最近NPO法人の設立申請をした方から、
「設立総会議事録に書く署名人のサインの所は、パソコンで名前を入力するのみでいい、とお役所から言われた。ハンコ不要だって」
と聞きました。

2021年(令和3年)の夏から秋頃、多くの自治体でNPO法人の提出書類から「押印」が廃止されたことが周知されていたので、なるほどそうだよね~と納得。

ただし、設立総会の議事録と異なり、法人になったあとの総会議事録や理事会議事録は、押印が要るかどうかは定款によります
また、定款では押印不要となっていても、法務局の登記時の提出書類としては、ハンコが押されていないと駄目なものもあります。

ややこしいので、整理しました。

署名と記名は違う

前提の説明として、署名と記名は違うものである、という話です。

署名=自書。本人が手書きで書いた氏名。

記名=氏名がパソコンで入力されているような、本人が書いたのではない氏名の記載。漢字など正確に記載されている。

2021年夏ごろまでは、記名の場合は押印がセットになっていることがだいたい常に求められていました。「パソコンで打った氏名なんて、本人が知らなくても記載できるやんか!」みたいなことだと思います。それはそれで、納得感あります。

定款での議事録署名人の規定、主なパターン

総会議事録にせよ、理事会議事録にせよ、議事録署名人の名前をどのように記載するか、 NPO法人は通常、定款で決めていると思います。
(決めた覚えがなくても、「モデル定款」を下敷きにして定款を作っていたら、だいたいその時のモデル通りに記載されているはずです。)
以下、よくある規定のパターンを、5つ挙げます。

議事録には、議長及びその会議において選任された議事録署名人2人以上が署名、押印し なければならない。…1

(「2人以上が」まで同じ。以下、同)記名、押印しなければならない。…2

記名押印または署名しなければならない。…3

署名または記名押印しなければならない。…4

署名しなければならない。…5

この5種類、実務上どんな違いがあるのでしょうか。
1は、「署名して押印」なので、本人の手書き署名プラス、印鑑です。
2は、名前を書く部分はパソコンで打ってあってもOKです。ハンコは要ります。
3と4は書いている順番が違うだけで、実務は同じ。パソコンで打った名前には押印が必要で、手書き署名ならハンコは不要です。
5は、手書き署名のみが認められる。ハンコは要りません。

・・・こうなります。

実印が必要か、認印でいいか

もう一つ、「押印の場合のハンコって、認印でいいの?」という疑問があるかもしれません。

株式会社の株主総会の議事録押印や、取締役会議事録の押印については、実印が必要という決まりはありません。そこから考えると、定款で「押印」を定めている場合でも、実印を用意する必要はなく認印で構わないといえるでしょう。
厚労省社会・援護局が2017年(平成 29 年) 7 月に出した「社会福祉法人に対する指導監査に関するQ&A」でも、議事録署名人について「実印による必要はなく」とされています。

ただし、法人運営上は定款の規定通りであれば足りるのですが、議事録を別の用途で使わなくてはならない場合は、ちょっと違います。

たとえば、理事長を決めたら法務局に登記しないといけないですが、そのときは役員を選任した総会議事録と、理事長を理事の互選で決めているなら理事会議事録(または理事の互選書)を法務局に提出する必要があることが多いです。
NPO法人の役員変更手続き(法務局サイトにリンク)

このときは、法務局は議事録にハンコがないと受け付けてくれません。さらに、このときのハンコは原則「実印」です。(詳しくは「NPO法人の役員任期が過ぎてから総会で改選したら、任期と理事長互選日に注意する」の最後のブロックをご覧ください)

これから定款を作る場合、議事録署名人は署名にするか記名にするか?

冒頭の繰り返しになりますが、議事録署名人が記名(=パソコンで打った氏名)のみでハンコ不要とされたのは、あくまでも「設立総会」の議事録の話です。
NPO法人になってからの総会の議事録署名人は、定款に書いたとおりにする必要があります。

となると、これから定款を作るかたは「定款にどう規定するか」が大事になってきます。具体的には、先ほど書いたパターン1~5のどれにするか、ですね。
今、自治体が出している「モデル定款」をいくつか見てみると、3、4が多く、5もありました。3~5を再掲しましょう。

記名押印または署名しなければならない。(3)
署名または記名押印しなければならない。(4)
署名しなければならない。(5)

まあ、3、4であれば手書きで書いてもらってハンコ無しでもいいし、パソコンで打った氏名に押印してもいい。どちらも有効なので、無難かなと思います。 5の場合は記名では不可で、必ず議事録に手書きしてもらわないといけなくなります。

では、「記名しなければならない。」だけにするのはどうなのか? だって、設立総会議事録みたいな重要なものについて、お役所が「記名だけでいい。」と言われたわけです。
しかし現状では、いざというときに議事録が有効でない不安がつきまとうかもしれません。いずれ記名のみの議事録が普通になるのかもしれませんが、いま議事録署名人を記名のみにしてしまうのは、ちょっと勇気が要りますね。

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