総会で選任、任期は2年、総会までは任期が延びる―という定款がよくある
市民活動推進機関出身という経歴と市民活動関係の媒体を作っている立場をかっていただいて、いまも地域の市民活動センターをお手伝いさせていただいています。
NPO法人運営の疑問にも、よく直面します。その都度勉強しているのですが、最近あらためて確認したのが、NPO法人の役員のこと。
法人設立についてはかなり調べてきましたが、設立後のことで最近整理できたのが、二期目以降の役員の任期開始日と末日のことです。
NPO法人の役員の任期や理事長の選び方などは、その法人の「定款」に従いますが、少し前のモデル定款や前例を参考にして定款を作っていると、次のような決まりになっていることがよくあると思います。
- 役員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。
- 後任の役員が選任されていない場合は、任期の末日後最初の社員総会が終結するまでその任期を伸長する。
役員任期が過ぎてから総会で改選したら、そこから任期が開始する
最初の役員はいつからいつまで任期があるのかというと、だいたいは定款の最後のほうに「附則」というのがあり、次のようなことが書いてあります。
- この法人の設立当初の役員の任期は、・・・・成立の日から( )年( )月( )日までとする。
最近見た定款例で、ここが設立から2年後の3月31日となっていました。この団体の事業年度は、4月はじまりの3月終わりです。一般的には、総会は年度の決算が終わってから開催するので、5月とか6月に総会をすることになるでしょう。
役員は総会で決めるのが普通ですから、設立2年後の3月末に第一期の役員の任期が終わったあと、総会まで「任期の伸長」が生じます。
このとき、例えば総会が5月31日だったら、第一期の役員の任期は、3月末から5月31日まで伸びるわけです。そして、6月1日から、第二期の役員任期が始まります。
ここで重要な点ですが、6月1日から始まった任期は、定款どおり「2年」です。
つまり、2年後の5月31日までが役員任期になります。任期の末日が3月31日にリセットされるのではありません。
そして、 さらに2年後の総会が5月15日であったとしても、第三期の役員の任期のスタートは、6月1日からです。総会の翌日からではありません。
「理事長を理事が互選する」のは、任期がスタートしてから
次に、「理事長を決める日」の問題です。
多くのNPO法人は理事の中から理事長や代表理事などを選んで、その人を法務局に「代表権を有する理事」として登記すると思います。
理事長の選び方は、これも定款によくあるのは「理事の互選で決める」というものです。
定款がそうなら、理事になっている人同士で互選するという話なので、役員任期がスタートする前に互選しても、理事でもなんでもない人が理事長を決めることになり無効です。
つまり、過去に一度でも総会まで役員任期が伸びたことがあったら、正確な次期任期の開始日を確認して、それ以降に互選しないといけません。
ただし、新たな任期に就任する理事が、全員前期の理事である場合に限り、任期がスタートする前に互選しても有効です(「予選」という名称で、認められています)。
なお、「総会で次期の理事が決まったあと、その日のうちに互選するのはOKか」を法務局で尋ねると、「総会で選任された理事が全員就任を承諾して、その総会の日に任期が満了するなら、総会後の理事長互選は有効」ということでした。次期の任期スタートは翌日からであっても、満了日であれば互選が可能だそうです。
前期の理事長が新任期の理事にならない場合は、理事の印鑑証明がたくさん要る
最後に、新任期から理事長が新たな人になる場合の注意です。
代表権を有する理事を法務局に登記する際に、「理事全員で理事長を互選した」証拠として、「互選書」か「互選したことが書かれている理事会議事録」を添付しなければなりません。
前者の互選書も、後者の理事会議事録も、法務局のひな型があるので作るのはそれほど難しくないのですが、1点、分かりにくいと思ったことがあり、法務局で聞きました。以下、その結果です。
互選書には、理事全員の記名押印が必要です。ハンコは個人が印鑑登録したものを用いて、また全員の印鑑証明書を添付する必要があります。
理事会議事録の場合は、議長と議事録署名人の記名押印が必要です。ハンコは、やはり個人が印鑑登録したものを用います。押した人の印鑑証明書も、全員分必要です。
ただし、前期に代表権を有する理事として登記されている人、すなわち前期の理事長が、その中の一人として記名押印している場合は、印鑑証明書は1枚も要りません。
前期の理事長が理事にならず記名押印できない場合は、上記の原則通り、互選書なら全員分、理事会議事録なら議事録記名者すべての、印鑑証明書が要ります。しっかり準備してくださいね。