理事長が決まったら法務局で登記
NPO法人の理事は、定款で例えば「理事の任期は2年」となっていたら2年に一度、総会などで選びます。そのあと、新体制の理事会などで理事長が決まったら、法務局で登記しなければなりません。
登記は、理事長が前期と同じ人であっても必要です。「同じ理事長だから手続きしなくていいよね」ってことにはなりません。
この手続きが、たま~になので、やり方を忘れがちです。
なので、参加しているNPO法人で今年やった内容を、記録しておくことにしました。
なお、下記の流れは、NPO法人が、下記の条件に合うケースの場合です。理事長は、「代表理事」とかちょっと違う名称でも大丈夫です。
- 理事は総会で選任する。
- その選任日の時点で、前期の理事任期は切れていない。
- 前期と同じ理事長1人を理事会で互選する。その理事会は、新任期の開始日に行う。全員が発言でき、多数決を取れるなら、オンライン理事会でも良い。
- 理事長は法人を代表する。
このケースなのかどうかは、定款の記載にもよります。法人の定款によっては、理事長を設けないとか、理事長が法人を代表することにしていないとか、違うケースもあります。少し違うと手続きが異なる点がありますので、ご注意ください。
条件の2番目の「理事任期」は、ちょっと難しいかもしれません。
法務局の登記内容が分かる登記簿謄本で過去の任期推移は分かるのですが、丸2年を超えてから定期総会を開催するような場合は任期が延び、ちょっとややこしいです。NPO法人の役員任期2年が過ぎてから総会で改選したら、任期と理事長互選日に注意するをご一読ください。
法務局がいう「役員」「理事」「重任」
法務局でのNPO法人の代表者を登記する手続きは、法務局のウェブサイトのNPO法人ページ「役員変更」カテゴリーから、リンクページがあり記載されています。
基本的にはこのサイトからひな型をダウンロードして書類作成するのですが、法務局の解説を読む前に、気を付けておくとよいことが3つあります。
ひとつめは、役員という言葉です。
NPO法人の所轄庁(都道府県庁や市役所に担当部署がある)でいう「役員」は、理事全員と監事を指しますね。
でも、前に挙げた条件の法人だと、法務局に登記する「役員」は代表権のある理事――つまり、理事長のみです。法務局の手続きをするときは、「登記する役員=代表者だけ!」というように頭を切り替えましょう。
ふたつめです。
代表者として理事長を選んだら、所轄庁では「理事長」という役職名をしょっちゅう書きますが、法務局登記時の資格名称は、理事長ではなく「理事」です。
ここも、「法務局に登記するときの理事長の資格名称=単に理事!」と切り替えましょう。
最後、みっつめです。
理事改選前後で同じ人が理事長であるケースは、所轄庁では「再任」ということが多いですが、法務局サイトでは「重任」となっています。
この解説では前のブロックに書いた4条件の中に「選任日の時点で、前期の理事任期は切れていない」があるので、同じ人が理事長になるなら「重任」となります。
申請書書式をダウンロードして、申請日の予定を立てる
ここまで確認して、いざ法務局の上記ページを開きましょう。
NPO法人の「役員変更」カテゴリーから、「辞任及び重任」を開きます。
役員変更登記申請書のタイプは5つありますが、そのうち「NPO法人役員変更登記申請書(理事の重任又は辞任等)」を使います。
申請書書式をダウンロードして、記載例を見ながら記入します。
もしも理事任期が完全に切れてしまい、その後理事を選んだような場合は、「NPO法人役員変更登記申請書(理事退任後に理事選任手続を行った場合の理事退任、就任」の申請書と記載例を使用します。
法務局に申請する日は、理事長を選んだあとですので、条件の3のとおりなら、当然新任期が始まったあとになります。
役員変更登記申請をしてから登記完了までの間「登記簿謄本」が取れない時期がありますので、もしも登記簿謄本が必要な予定がその期間に重なりそうなら、任期が変わる前に取っておきます。
特定非営利活動法人変更登記申請書を書く
さて、申請書の記載例をみながら、申請書を書きましょう。
申請書のひな型の登記の事由は「理事長の変更」ではなく「理事の変更」となっていますが、前のブロックの「注意点」が分かっていれば、「理事の変更」だが理事長のみを登記するのだ、と理解できるでしょう。
次に引っかかるのが、登記すべき事項かもしれません。注意事項にデータ送信の手続きが書いてあるので、何か特別なことをしないといけないんじゃないか… と悩むわけです。
そこは気にせず、ひな型にある通り「別紙のとおり」と書いて、記載例3ページ目にある通りの内容を書いた「別紙」を作ればいいです。
「資格」は、注意点に書いたとおり、単に「理事」です。
「住所」は、理事長の住民票どおりに書きます。
「原因年月日」は、新任期の最初の日です。
「役員に関する事項」
「資格」理事
「住所」○県○市○町○丁目○番○号
「氏名」○○○○
「原因年月日」令和○年○月○日重任
でも、5行程度の文を別紙にするまでもないという気もします。なので、「登記すべき事項」の横の「別紙のとおり」を消して、直接上記の事項を書きました。それで問題なかったです。
添付書類の議事録、理事の互選書、定款
添付書類は、申請書のモデルには7種類書かれていますが、最小で以下の3点での申請ができます。
- 社員総会議事録 1通
- 理事の互選書(理事会議事録) 1通
- 定款 1通
そして最後に1行、「就任承諾書は、理事会議事録の記載を援用する。」と書きます。これで済ませるためには、以下のようにします。
社員総会議事録
- 法務局の記載例「社員総会議事録」の2号議案「役員任期満了及び辞任につき改選の件」を参考に、任期満了、辞任、選任について明記。住民票通りの住所も書く。
- 役職名は、「理事長」は理事会で決めるのだから、総会での選任時点では「理事」「監事」のみ。
- これこれの人が「理事に選任された」ことに加えて、「被選任者は、いずれもその席上就任を承諾した」を入れる。
- もちろん、実際の総会の中で「就任を承諾しますか?」「します」というやりとりを必ずする。
- 法務局には、議事録署名人の押印がある原本か、コピーの場合は原本であることを証明する必要がある。最初から押印がある議事録を2通作っておくと、原本を提出できるので便利。
理事の互選書の代わりに理事会議事録
「理事の互選書」の代わりに、理事長を互選で決めたことが書かれている 「理事会議事録」を提出することができます。
理事会議事録は、多くの場合 定款で作らないといけないことに決まっているので、どうせ作らないといけない議事録で兼ねてしまうほうがラクです。
- 法務局の「理事会議事録」例の「議事の経過の概要及び議決の結果」を参考に、「理事長の選定」と「席上ただちに就任を承諾」を議事に含めて、議事録に記載する。これで、就任承諾書を別途用意しなくてよくなる。
- 理事会議事録も、原本を2通作っておき、1つを提出すると便利。
定款
- 内閣府のNPO法人ポータルサイトで自法人を検索し、定款をプリントアウトする。
- ホッチキスで止めて、各ページを開き、綴じ目をまたいで代表印を押す。
- 最後のページの余白に「現行定款に相違ありません。」と書き、申請日、団体住所(登記通りに)、団体名、理事 ○○○○(代表者氏名)を書く。代表印を押す。
申請書の日付・申請人
添付書類が揃ったら、登記申請書に戻って、最後の日付以降を書きます。日付は、法務局への提出日です。
単に提出だけなら、開館時間に持っていけば受け取ってもらえます。不備があったら、後日電話がかかってきます。
不安があったら、相談予約して提出しましょう。その場でチェックしてもらえて、間違っている点を対面で教えてもらえます。可能なら法人の代表印を持っていくと、その場で直せることが増えます。
申請人の個人名は、「理事」として代表者の氏名を書き、代表印を押します。
「連絡先の電話番号」は、団体の事務担当者が書類を整えた場合、 法人や代表者の電話ではなく事務担当者自身の電話番号を書くとよいです。電話番号の後ろに (事務担当 ○○○○)と付記すると、電話があった際にスムーズです。携帯電話でも大丈夫です。
「申請する人間は代表者ではないから、委任状が要るのかな?」と、ここも迷うのですが、法務局で聞くと「委任状無しで構わない」とのことでした。
これで、2年後はスムーズな準備と提出ができますように……(法制度変わらないでね)