小規模事業者持続化補助金、採択経験から思うポイント

商工会議所や商工会が窓口となり募集している小規模事業者持続化補助金が、今年もあるようです。前回の補助事業に採択されましたので、その経験とポイントを書いておこうと思います。
過去、市民活動関係の補助金・助成金についてはいろいろな立場で経験してきましたが、独立後の個人事業主として受ける補助金は初めてでした。終わってみると、「申請時にこうしておけば良かった」と思う点もあります。

ちなみに、私はホームページや紙媒体の編集・デザイン業を営んでいますので、製造業や店舗の方は、注意するところなどかなり異なるかもしれません。補助金自体も、見直しなどで制度変更されている点もあるでしょう。
これから申請される方や、今後は採択された方が参考に見られる場合は、そのあたりをご理解の上でお願いします。

小規模事業者持続化補助金の概要
(日本商工会議所のサイトに載ってますが)

私が思う、主な特徴4つです。

  1. 「小規模な事業者」に対する補助である。
  2. 申請にあたって、地域の商工会議所(地域によっては商工会)に相談する。
  3. 「販路開拓」のための手立ての費用を補助するもの。
  4. 「経営計画」を作り、そのためにこんな「販路開拓」が必要なんだ…というストーリーが必要。

「小規模な事業者」であるかどうかは、日本商工会議所サイトの募集要項を見れば分かります。

商工会議所へは、「こんな内容で申請したいんですけど~」的な相談をします。会員で無くてもOKです。
私は、募集要項と同サイトの事例集をよく読んで、申請書類で書けるところは書いて持って行き、迷ったところや分からないところを聞くようにしました。
書いた書類は、電話で確認したうえで事前にメールでお送りしておきました。そのほうが、内容のアドバイスをしていただきやすいと思ったからです。
私は結局、方向性に迷ったこともあって、2回相談させていただきました。

最後に、商工会議所の方が「事業支援計画書」を書いてくださいます。「商工会議所として、こんなふうにこの事業者を支援しますよ」というものです。申請には、この書類が必要です。
応募締め切り間際だと、商工会議所の方がこの書類を急いで作らないといけなくなるので、相談は早めに始めましょう。(私は締切10日前という間際に商工会議所での相談に伺い、「事業支援計画書」をいただいたのが締切日の朝でした…すみません)

経営計画と補助事業計画の立案

申請書類を書くときは、事業所の住所や概要を書く申請書は後回しにして、経営計画書と補助事業計画書から取り掛かったほうがいいと思います。補助するかどうかを判断されるもとは、ほとんど経営計画書と補助事業計画書の内容なので。それに、事業所概要よりもこちらのほうがずっと書くのが難しいので、先に困難を超えてしまったほうがいいからです。

経営計画書は、「自分の事業所を、将来にわたってどうしていくのか」を書くものです。
補助事業計画書は、「今回補助を受けたい対象として行うこと」を書きます。
この2つがリンクしている――「今回補助を受けてこんなことをすれば、こんな経営計画が叶うのだ」という関係性が必要です。
最初に書いた「特徴4つ」では、この関係性を「ストーリー」と書きましたが、妄想の創作物であっては当然いけません。夢物語ではなくて「実現する目標」です、もちろん。

この関係性がきちんとあったうえで、経営計画と補助事業計画のそれぞれの中身が問われます。

どちらも、きちんと市場を見据えた、実現できる計画になっているかどうか。
この事業者は、それを実行できるのか。

そんなことが審査されるのだと思います。

だから、経営計画書を書くときは、改めて自分がお客様に提供しているサービスを捉え直したり、何を評価していただいているのか考えたり、見込み顧客を考えたり、その市場で競合する事業者を調べたりしました。
それで分かったことや思ったことをまとめて、だから今後こんな方向で伸びていきたい、という未来を描きました。

で、そのために今どんな販路を開拓するのかを考えて、補助事業計画書を書きました。

書いていると、「あれもやろう、これもやってみよう」と思いがちですが、通常業務にプラスして行うことになるので、実際にやってみると、想像以上に時間が足りませんでした。
小さいことでは実行できなかったこともあり、実施後の報告書でそのように書いて特にペナルティーもなかったですが(その分のお金は当然もらえません)、自信喪失にはなるので、やはり過信しないことだと思います。

補助金申請書の文章部分の書き方は、経済産業省 近畿経済産業局の「分かる!! 採択に近づく補助金等申請書の書き方ポイント!」が参考になります。

申請する補助額の記載

肝心の補助金は、この補助事業計画を実行するのにいくらの何が必要かをリストアップして、書かれた経費に対して交付されることになります。

原則コースの場合で、総額50万円までが補助されます。
補助額は、実際にかかった費用の2/3です。例えば総額75万円の販路開拓策をした場合は、満額の50万円が補助され、25万円は自分で負担します。100万円かかった場合は、補助が50万円、自己負担が50万円になります。
どんな費用が認められるかは決まっていますので、これも募集要項をよく読んで把握、です。

補助の際に重要な区分けは、「補助対象経費」として挙がっている「広報費」「開発費」「資料購入費」などの経費区分です。採択された後で、決定額を下回る分にはいいですが、例えば「広報費が20%以上かかることになったから、安くあがった開発費から補助額を回したい」というような場合は、変更承認を受けなければなりません。

なので、経費区分を無理に細かく立てる必要はないです。そのぶん、他の経費区分の額が下がってしまうので。
でも、生じそうな経費区分は立てておくほうがいいので、まあ結局、計画を具体的に詰めることにつきますね。

申請する補助額の算出にあたっては、見積もり書やカタログのコピーなどは必要ありません。「概算」で書いて大丈夫でしたが、概算なりに「単価×数量」的な根拠は必要です。

小規模事業者持続化補助金が採択されたあとの進行、報告など

申請前は通るかどうかしか関心が持てないと思いますが、そのあとの話です。

私は、採択の可否が最初に分かったのは商工会議所サイトでの公表でした。スケジュールで示されていた日よりも遅かったと思います。

そこで分かっても、「補助金交付決定通知書」が届くまでは、発注や購入はできません(するのは勝手ですが、補助対象になりません)。この通知書が届くまで、また日数がかかったと思います。

そして、通常の仕事の合間をぬって補助事業計画書に書いた事業をせっせと行い、無事終了したら報告関係の書類を提出します。報告は、文章を書くものもありますが、お金を適切に使ったことや本当に使ったことを示す意味での報告にボリュームがあります。

報告の提出は、計画していたことが早く終われば早く出すことになるのですが、多くの場合ぎりぎりまで実施されていると思います。
私も締切少し前に届くくらいに送りましたが、報告が締切前に日本商工会議所に届かないと補助金の支払いはなされないので、送ってから「ちゃんと届いたか」がとても不安になりました。
申請書を出した時は申請書受領のメールが来たのですが、報告の提出に対しては特にありませんでした。1週間後くらいに日本商工会議所に電話して確認できましたが、郵送時に、追跡できる方法で出せばよかったと思います。

さらにそのあと。
事務局の日本商工会議所には、大量の報告が集中しているはずで、かつそうした報告に慣れていない事業者も多いでしょうから、かなり大変なんだと思います。進行はあまりスピーディーとはいえません。それはいいんですが、そこを書いてくれているサイトがなくて、さなかにいろいろ不安を感じたのでこれだけは書いておこうというのが、実はこの記事に込めた一番の思いです。

去年の私の場合で言うと、報告の提出期限が12月10日。日本商工会議所に届いたのが、その少し前になります。
年内に補助額が確定するかなと思っていたのですが甘かったようで、仕事納めの頃にまた電話すると、「1月中ぐらいにチェックが終わる予定」ということでした。

1月半ば過ぎに、チェックのご報告が郵送で到着。書類にいろいろ不備があり(すみません)、追加書類を提出しなさいという内容でした。

追加書類を整えて、数日後の1月22日に郵便局の窓口から発送。そのあとじっと待って、2月15日に確定申告が始まっても何も来ないので、またまた電話。すると、「数日前に投函した記録がある」というお返事。もう1日待って、やっとポストに「補助金額確定」のお知らせが届きました。
3月3日に定型書式の請求書を出して、3月24日に入金されました。

お金を使うときの注意

最後に、お金を使うときの注意について、いくつか。

使い始めのタイミングについては前に書いた通りですが、使い終わるタイミングにも注意が必要です。

補助期間内に支払いまで終わっていないといけないので、例えば、クレジットカードを使うときは、補助期間内に銀行口座から引落とされないといけません。

口座振り込みによる支払いも、夜などにネットバンキングで支払いをすると振込票が「予約振込」になり、これだけでは証拠書類になりません。私の場合は、実際に振り込まれた記載がある通帳コピーを、追加提出しなければなりませんでした。

レシートは、宛名のないものは駄目です。宅急便の送料の証拠書類として、送り主に自社があり金額も書かれた送付票の控えを提出しましたが、領収の宛名ではないので駄目でした。これも、宅急便の集配所に送付票控えを持って行き領収書を発行してもらって、追加提出しました。

その他、お金を使うことに関する根拠や証拠の書類は、かなりきちんとしたレベルで必要です。報告期日の間際に整えるのは大変だし、できないこともあるでしょう。採択後にもらえる「手引き」を最初に熟読して、確実に進めることが大切です。